1.誘致の先にある“見えない問題”

インバウンド需要の回復により、再び地域への観光客が増えつつあります。空港や港に近いエリアでは、免税対応や多言語対応などの整備が進み、短期的な経済効果に注目が集まっています。
しかしJASAでは、観光誘致はあくまで「通過点」に過ぎないと考えます。観光というフィルターを通して、地域の交通・案内・接客・清掃・ごみ処理・医療などの“構造的な課題”が露呈するケースは少なくありません。観光客の流れを受け止められないという事実は、地域そのものが抱える設計の問題を可視化する“契機”となり得ます。
2.「量の拡大」より「質の受け皿」を
誘致戦略は“数”を追いがちですが、肝心なのは「その人たちをどのように迎え、地域と交わらせるか」という“質”の部分です。地元の交通手段は適切か?案内板やトイレは清潔か?案内人や接客者に無理はないか?
観光客が見ているのは「その地域の本来の姿」であり、地域住民と観光動線の交差が生むひずみは、やがて“地域への不信感”につながる可能性もあります。そのため、JASAでは観光施策と地域基盤整備をセットで捉える視点を重視しています。

3.地域設計を見直す“入口”としてのインバウンド
観光施策は単独では完結しません。むしろ、外からの目が入ることで、普段は気づかない地域の設計不備が浮かび上がる。それこそがインバウンドがもたらす最大の価値だとJASAは考えます。
JASAでは、観光を「外貨獲得」ではなく「地域構造の確認装置」として捉え、行政・事業者・住民を交えた課題共有と仕組みの見直しに取り組んでいます。インバウンドは“課題の鏡”。そこから地域の未来像を逆算して描いていくことが重要です。
2025年5月21日
次回予告
次回【視点3】のテーマは「なぜ“交流人口”は定着しないのか」。
総務省が地方創生の一環として提唱する「関係人口」――その構築が一過性で終わる理由と、再設計のヒントを考察します。

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JASA 日本エリアマネジメント支援協会
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