地域を動かす仕組み論 ― JASA地域戦略16の視点 【視点15】「共につくる体験型交流 ― 次世代の地域価値づくり」

1.体験は「見学」から「共創」へ

地域への来訪者との交流は、かつて“視察”や“研修旅行”として受け入れられてきました。しかし現代においては、単なる見学ではなく、“共に体験し、共につくる”スタイルへの転換が求められています。

地域の暮らしや文化、産業に一歩踏み込む体験は、参加者にとって強い印象を残すだけでなく、地域側にとっても“地域の価値を再発見する機会”となります。たとえば、地元の農家と一緒に作業しながら語り合う中で、暮らしの知恵や課題感を共有するような“共創型の交流”が広がっています。

交流は“提供するもの”ではなく、“共につくるプロセス”であるという意識が、これからの地域の価値を左右します。

2.「地域が用意する体験」からの脱却

体験型観光や交流プログラムは、“地域が一方的に用意するもの”という構造が根強く残っています。この構造では、来訪者の関与は受動的になり、地域住民との距離も縮まりにくくなります。

今求められているのは、体験の“共同設計”です。たとえば、訪問前から参加者と地域の関係者がオンラインで交流し、どんな体験を望むか、どの地域課題に関心があるかを共有すること。そして当日の体験が終わった後も、SNSや報告会などを通じて“関係が続く仕組み”を整えることが重要です。

交流を“イベント”ではなく“関係づくり”と位置づけ直すことが、真の価値創造につながります。さらに重要なのは、験の中に“共感が生まれる瞬間”をどう設計できるかそこに地域の人も来訪者も、記憶に残る関係性を見いだせるのです。

3.JASAの視点と「次世代型交流」の設計

JASAでは、体験型交流を“地域づくりのプロセス”と捉えたいと考えています。実際の支援実績はまだ数少ないですが、DCMが橋渡しを行った京都市とUnionPayとの連携協定のように、異なる立場をつなぐ対話と設計の場づくりには大きな可能性があると感じています。

観光地として課題を抱える京都では、マナーの問題、住民生活との軋轢、情報の伝え方など、来訪者との関係性の再設計が求められています。JASAは、こうした背景をもとに、“共につくる交流”のあり方について、これからの支援モデルとして提案していきたいと考えています。

対話・共感・参加が一体となる体験設計は、交流を単なるイベントで終わらせず、地域の文化や価値を再発見する機会にもなります。この視点から、京都のような観光地の構造課題をどう乗り越えるか――次回 #016ではその全体像を整理します。

2025年12月1日


次回予告

次回 #016のテーマは「地方支援の現場で見えてきた“3つの壁”」。
京都などの現場支援から見えてきた構造的課題を共有し、“他地域にも通じる気づき”として整理します。


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