1.京都の支援現場で垣間見えた“もどかしさ”

京都市とUnionPayとの連携協定における支援に携わる中で、表面化しにくい“もどかしさ”のような現場の感覚が浮かび上がってきました。観光都市として世界的な注目を集める一方で、関係人口との距離感、住民との摩擦、現場の疲弊といった課題が交錯しています。
制度と住民感情、事業者と行政、現場のスピードと手続きのズレ──これらは決して京都だけの特殊事情ではなく、他の地域でも“今後起きうる傾向”として見えてきたものです。
断定的な知見というより、“あの時こんな場面があった”“この点がすれ違いやすかった”といった一次的な観察から、共通する構造が浮かび上がってきた印象があります。
2.現場で頻出した“3つの壁”とは
京都市とUnionPayとの橋渡し施策の経験から、“他地域でも起きやすい”と感じたのが次の3つの壁です:
①「制度の壁」──たとえば、観光・文化・福祉といった縦割りの制度設計が、現場の複合的なニーズに追いつかない場面。担当部署が異なることで、企画が途中でストップすることもありました。また、制度ごとの申請書や審査基準が異なるため、現場の小規模団体にとっては“使いこなせない制度”になってしまっている実態も見えました。
②「マナーの壁」──特にインバウンド観光が盛んな京都においては、文化の違いや生活習慣のズレから生じる“マナーの衝突”が顕在化しています。たとえば、民家の前での記念撮影や無断立ち入り、路地での騒音など、地域住民にとって日常を脅かすような場面が日常化しており、“穏やかな日常を守るために、観光は歓迎しない”という感情にまで発展してしまっている地域が多くあります。歓迎と摩擦のバランスに悩む声が交錯する事例です。
③「時間の壁」──行政の予算スケジュールや手続きのタイミングが、地域や現場の変化スピードと合わず、熱量が冷めてしまうといった機会損失。
特に短期で成果を求められる補助金制度では、地域側の熟議や関係性づくりに必要な“準備の時間”が確保されず、良質な企画が形になる前に断念される例もありました。
これらの壁は明文化されにくく、調整役が不在の現場ほど“いつの間にかうまくいかなくなる”という現象として現れます。

3.JASAとして、これから「どう関わるか」
JASAは、現時点では明確な支援実績を持っていません。しかし、こうした現場のリアルな声や違和感を“まとめ役”として翻訳し、再設計に向けた土台づくりを試みることはできると考えています。
制度や施策の優劣ではなく、“どうすれば現場が動きやすくなるか”という問いを、関係者と一緒に投げかける。中立的でありながら、“共感を翻訳する存在”として、関係性を組み直す伴走役であること。
この連載を通じてJASAが見えてきたのは、“地域を動かす仕組み”とは何かを答えきるのではなく、“一緒に問うこと”を始められる構造をどう作るか、という出発点でした。
私たちは、これからもこの問いを持ち続けながら、地域との対話を進めていきます。
2025年12月16日
この連載は今回で最終回です。
全16回の中で積み上げてきたのは、答えではなく“問いの形”です。
仕組みをつくる前に、関係を整えること。そのスタートに立ち会える存在でありたいと、JASAは願っています。

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JASA 日本エリアマネジメント支援協会
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