地域を動かす仕組み論 ― JASA地域戦略16の視点 【視点14】「文化財を“触れられる資源”に変えるには」

1.保護と活用、そのジレンマの中で

地域に点在する文化財は、歴史的価値や景観資源として注目されつつも、保護の観点から“触れてはいけないもの”として距離を感じさせる存在でもあります。保存・継承を最優先にするあまり、住民や来訪者が実際に関われる機会が極端に限られてしまうことも多くあります。

たとえば重要文化財に指定された建築物や庭園などは、関係者以外の立ち入りが制限されることで、地域住民にとっても“どこか遠い存在”となってしまうことがあります。しかし本来、文化財はその地域の暮らしの中から生まれたものです。

だからこそ、保護を前提としつつも、“ふれる”ための工夫や“親しむ”ための接点づくりが求められています。保存だけでなく“参加できる仕組み”の有無が、地域とのつながりを大きく左右します。

2.“資源化”の第一歩は、語り直すこと

文化財を活用するとは、単に観光地として公開することではありません。重要なのは、その価値や背景を“地域の言葉”で再定義し、誰がどのように関わるかを設計することです。

たとえば、年に1回だけ開放される寺院を、地元小学校の歴史学習に活用した事例では、住職や地域住民が“語り部”となり、子どもたちに建物の由来や祭礼の背景を伝えることで、単なる観光資源ではなく“地域の知恵”として再評価されました。

文化財を“ふれることのできる資源”にするには、まずその意味をわかりやすく“語る”ことが第一歩なのです。また、地域の人々自身が自信を持って説明できることが、誇りや愛着を育てる起点にもなります。

3.JASAの視点と“日常化”の設計

JASAでは、文化財の価値を“地域の日常に埋め込む”という視点に深い関心を持っています。文化財は本来、その土地の暮らしや歴史とともに育まれてきた存在です。その価値を未来につなげるためには、“守る”だけでなく、“関わりの回路”をどう設計するかが問われています。

私たちは、文化財の扱いを“特別なもの”に閉じるのではなく、日常の言葉、風景、記憶の中にどう溶け込ませていくか──そうした問いを地域の皆さんと共有しながら、試行錯誤を重ねることが重要だと考えます。

そのためには、制度的な枠組みや専門的知見を越えて、地域住民の声やまなざしを“資源化”する柔らかい発想が求められます。JASAはまだ支援の途上にありますが、文化財を“人と人をつなぐ関係資産”と捉え、これからの共創に向けた議論の場づくりを目指してまいります。

2025年11月16日


次回予告

次回 #015のテーマは「共につくる体験型交流 ― 次世代の地域価値づくり」。
視察やモニターツアーを超えて、来訪者と地域が共につくる体験設計について考察します。


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